やっぱり『やもり通信』

海外生活一区切り。これからは日本の生活メインの内容になりそうだけど、タイトルはやっぱり『やもり通信』・・・で、いいかなっと。

卒業式の拍手

 ブダペスト日本人学校卒業式が終わってから一週間が過ぎました。

 先週の日曜日、3月8日に行われた卒業式が、直前の3月1日(火)からいきなり爆発的に広がったインフルエンザのために、在校生70人のうち40人が欠席、そして卒業生も1人欠席という明らかに想定外の状況の中で行われたことは前回書きましたが、この卒業式の中で、ひとつ気になることがあり・・・


 今でもやっぱり気になるので、書き残すことにしました。



 小規模校で卒業生の人数も少ないと、自然と一人一人にしっかりスポットライトが当たった卒業式となります。

 一人一人が前に出て、校長先生から直接受け取る卒業証書。

 校長先生は、目の前にいる子に「前期の児童会長お疲れさまでした」などと声をかけながら手渡します。


 卒業証書を受け取ったあとは、卒業生の「作文」発表

 一人ずつ順番に前に出て、この日のために書いた作文を読みあげます。

 この学校での思い出や、ハンガリーで過ごした日々から学んだことをまとめた子、仲間や先生、両親への感謝の言葉を綴る子、小学校生活の中で成長した自分についてを語る子・・・

 どれもちょっと似通っていて、でもちょっとずつ違う内容の卒業生たちの言葉。

 共通していたのは、みんな見事にしっかりと堂々とした態度で作文を読んでいた、という点。

 おどおどしている子も、声が小さくて聞き取りにくい子も、一人もおらず。


 小規模校での生活を経験すると、「人前で話す」回数が絶対的に増えることになりますが、
これって、かなり大きなことだと思いました。


 さて、その作文発表の時。
 
 トップバッターは後期の児童会長だったIくん。もともと人前で話すことが得意だったわけではないそうですが、それでも半年間「みんなのリーダー」という形で過ごした経験は大きかったのか、とっても落ち着いた態度で作文を読み上げました。

 そして最後に自分の名前をビシッと言って締めくくり。

 思わず「立派!」と拍手・・・・・

 ん?

 あれ?

 ここは拍手する場面じゃない?

 
 そう思っているうちに、Iくんは一礼し、決められた動線に沿って歩いて自分の席につきました。

 広い体育館に流れる静かで厳かな時間。


 そうか・・・
 
 ここって、静かに彼ら一人一人の言葉を心に刻みつけるところなわけね。

 

 2番めはSちゃん。

 名前を呼ばれ、「はい。」と元気よく返事をしたその声が、ちょっとかすれます。
 Sちゃんも風邪を引いているのかもしれません。

 前に進み出て作文を読み始めても、喉に違和感があるだろう声のままでとても苦しそう。

 時には咳き込みながら、なんとかしっかりと読み上げようと頑張るのですが・・・。

 声の調子は戻らないまま。


 この辺りから、さっきのIくんの時の静けさに違和感を感じてしまった私の頭の中は

「こんなに頑張っているSちゃんの発表が終わった時に、さっきみたいにしーーーんとしてしまうのって、なんかすごく気まずくない?」 

 そんな思いがぐるぐる。


 最後まで声の調子が戻らないまま作文を読み終え、今にも咳き込みそうな感じで名前を言って一礼したところで


 よく頑張った!

 もう、ここは拍手でしょ。

 

と、

 思い切ってやってしまいました。

 パチパチパチ・・・

 

すると、誰かが続いて パチパチパチ・・・


それに誰かの拍手も重なり・・・。



あぁ、よかった。


私の拍手、さっきみたいな沈黙に飲み込まれずに済んだー・・・。

(正直、かなりホッとしました)




 そして、思いました。


 卒業生が、6年間の思いやこれからの自分に向かっての言葉を大勢の前で堂々と発表して、

 そして、最後に自分の名前を言い、締めくくる。


 ここで、しーーーーんとしているのは、やっぱり変



 Sちゃんが喉の不調を押して頑張って発表したから・・・とかじゃなくて、

 
 こういう門出の、一人一人の決意表明にも似たものを聞いた時に自然と沸き起こる気持ち

「お疲れさま。今までよくがんばったね。これからもしっかりね!」

 それを相手に伝えるためには、やっぱり拍手。
 
 


そう、勝手に確信してしまった私は、次のKくんの時は、もう迷わず拍手。


 この時も、どこかから二人、三人・・と拍手が続きました。


 その後は、発表⇒名前⇒礼⇒拍手。


 最後のAちゃんの素直で温かい言葉に思わず涙・・・という保護者もいたようだったので、やっぱり拍手で締めくくることができてよかった〜、と、その頃には最初の頃の迷いもほぼ無くなっていたのですが


でも、なんだか気になって、帰宅後、みどり(小5)に聞いてみました。


「6年生の作文の発表の時って、拍手はしないってことになってたの?」



「そうだよ。」
という答えがあっさりと返ってきて、軽い衝撃。


「え? なんで? あーゆー場面って普通、拍手とかしない?」と聞くと


「さあぁ??」
・・・・だって、そう言われてるんだもん。と、ちょっと困ったような表情。


【卒業式】という大切な儀式の練習は、綿密に行われているはずです。

ここで起立、ここではこの人の方へ体を向ける、ここで一礼、ここで拍手・・・

何度も練習をして、リハーサルもして。



「でもさ、今日の式の途中では、拍手が起こったでしょ?」

それって違和感なかった?
みどりはそれにつられて拍手しちゃった?

と、続けて聞こうと思ったら、


「え?そうだったの?」と、私の顔を見つめるみどり。

あぁ、そうだった。

うちの子たちは欠席してたんだった、今日の卒業式。




 実はこの日の卒業式、別の場面でも「拍手」にまつわる出来事があったそうです。

 式の一番中心となる「卒業証書授与」の場面。

 出席番号1番のIくんが校長先生から証書を受け取った瞬間、来賓席にいらした小菅大使が、思わず拍手をされそうになったそうです。が、瞬間、周りはその雰囲気ではない、と思われたのかその手を止め、元の位置に。
・・・と、そのようすを察したのか、すぐそばに座っていた一人の保護者が大きく拍手をしたそうです。
 その保護者に続くように、大使も今度はしっかり拍手。
 そして、周りの他の人たちも・・・。

 私はこの場面のことには気づきませんでした。

 この「拍手のきっかけ」となったことには気づかぬまま、普通に卒業証書を受け取った子どもたちに拍手を送っていたのでしょう。ここで「拍手がない」という違和感は全く感じなかったので。

 

 卒業式での拍手。

 神聖な儀式としての【卒業証書授与式】の中では、あまり歓迎されるものではないのでしょうか?

 6年間の小学校生活を締めくくるこの場面で、

 「よく頑張りましたね」と証書を受け取り、

これまでの自分を振り返り、これからの自分自身へエールを贈る言葉を堂々と述べた時、

 そこに「拍手」は不要・・??


 もしそうだとしたら、なんだかすごい違和感。





 おめでとう!

 がんばったね!

 これからも応援するよ・・・


  晴れの門出に立つ子どもたちに、そんな色々な思いを大きな拍手で伝え、

  これから巣立つ彼らを、みんなの温かい拍手で包んであげる・・・



  拍手であふれる卒業式のほうが、好きだなぁ・・・


  厳かで静まり返った卒業式よりも。  


 
 皆さんの周りで行われている卒業式はいかがですか?