やっぱり『やもり通信』

海外生活一区切り。これからは日本の生活メインの内容になりそうだけど、タイトルはやっぱり『やもり通信』・・・で、いいかなっと。

「大切なのはずっと思い続けることだよ」


 もう先週のことになってしまいますが、

 ブダペスト日本人学校の3,4年生の『総合学習』の時間にゲスト・ティーチャーをお迎えするので、保護者の方もぜひどうぞ・・・という案内を担任の先生を通じて受け取りました。

 ゲスト・ティーチャーとして紹介されていたのは ミヘリス・ノルベルト(Michelisz Norbert)さん。

 
 昨年のハンガリーの「最優秀スポーツ選手」に選ばれた、WTCC(世界ツーリングカー選手権)のレーサー

 たぶん、ハンガリー人なら誰もが知っているだろうというレベルのすごい人・・・ですよね、きっと。


 しかも、今年の7月にブダペスト郊外のハンガロリンク(サーキット)で行われたレース(ハンガリー戦)で(ホンダ車で!!)みごと優勝したという、まさに時の人。



 とは言いましても・・・、以前ブログでこんなことを書いてしまった私ですので・・・
👇
『私はF1というものとは縁のないまま歳を重ねてきちゃったし〜』
『「せっかくブダペストに住んでるんだから一度はレースを見に行かねば・・・」という気合いも入らないし〜』
『だいたい(F1レースの)会場(←ハンガロリンクです)が遠いし〜』・・・・・などなど。


 「WTCCレーサーの◯◯さんをお迎えしてお話を・・・」などと言われても、

 「えぇ?あの人が学校にくるの!?」などという反応ができたわけでもなく、

 というか、顔すら思い浮かばない。


   こんな私がすみません。
   ミーハー根性丸出しで。


 そんな思いがちらつきましたが、でもやっぱり

 何かを極めている人、あるいは極めるべく常に前進している人のお話は絶対に聞く価値がある と常々思っているので、あんなことを書いた自分は封印して、9月3日(木)日本人学校の図書室へ、ノルビーさん(※)のお話を聞きに行ってきました。 ※子どもたちが彼のことを「ノルビーさん」と呼んでいたので。



 ※※9月14日追記※※
 この時これを書いた時点では、私、恥ずかしながら「WTCCのレース」と「F1のレース」の違いがわかっていませんでした。「ツーリングカー」、「レーシングカー」というカテゴリーもわかっていませんでした。もう白状しちゃうと、【車のレース=F1レース】くらいに思っていました・・・・・。あぁ、知らないって恐ろしい。
 



 さてさて、そして。

 いや〜〜〜・・・

行ってよかった。

本当によかった。

あまりにも素晴らしいお話だったので、途中、一瞬うるっときてしまって「うっ、ヤバイ、ヤバイ」となった場面もありました。

 今回、お話を聞くために図書室に集まっていたのは3,4年生。

 その中には、 
「好きなことには夢中になれるけど、夢中になりすぎて他のことには全く意識がいかなくなる」
「“やりたいこと” と “やりたくないこと” が、あまりにもはっきりしている」
「何かに集中している時にそれを中断させられると、烈火のごとく怒るか非常に機嫌が悪くなる」

・・・・・という、最近とてもムズカシイお年頃に差し掛かっている我が家の小3男児もその中にいたので、彼の存在と話の内容が微妙に絡み合ってしまったのがその原因かと。



 でも、そういう個人的な事情(笑)を抜きにしても、やはり「自分にはこれだ」と言えるものを持っている人の話にはとても惹きつけられるものがあります。

 全然「力説」していないのに、静かな口調で語られるその内容には重みがあり、説得力がありました。



 ということで、あの日、あの場にくることが出来なかった人のために、ちょっとおすそ分けします。
 お時間のある方は以下、どうぞ。


 あ、そうそう。
 このノルビーさん、実は今は日本にいらっしゃいます。

 今週末、栃木県の茂木にあるサーキット場《ツインリングもてぎ》で行われているレースに参加しているのだそうです。

 なんだかこのページを見る限り、いい調子でレースは進んでいるように見えるし、👉http://bit.ly/1FDFWGj

 あれれ? この「総合結果表」では一番上に名前が載っている!👉http://www.twinring.jp/result_m/2015/big/pdf/0912_wtcc_q.pdf



 ということで、遠くから声援を送りつつ・・・・



《ノルビーさん物語》

 ノルビーさんの出身は、ハンガリーの首都ブダペストから200キロほど南に行ったところにあるヒメシュハーザ(Hímesháza)という小さな街(というか村?)。
 1000人ほどの住民のほとんどが農業を営んでいるというこの街で、ノルビー少年は育ったそうです。
 小さい頃から「車」に興味のあったノルビー少年を、家族や村の人たちはよく農作業用のトラクターなどに乗せてくれたそうですが・・・

 そんな車に揺られながらノルビー少年は

  「・・・なんて遅い車なんだろう」


 その頃からスピード感を求める気持ちがあったんですね。

 そんなノルビー少年の思いを知ってか、ノルビーさんの叔父さん(伯父さん?)は、車の部品をいろいろ組み合わせてゴーカートのようなオリジナルの(?)車を作ってくれたそうです。この叔父さんは(伯父さん?)はトラクターなど農業用の車の修理工だったそうです。

 このオリジナルのゴーカートのような車で野原を走り回るという体験の中で、体いっぱいにスピードを感じ、風を切って走ることに魅せられていったそうです。

 そして、こんなふうに車をいつも走らせるような仕事に就けたら(=カーレーサーになれたら)という気持ちが芽生えていったというノルビー少年。
 
 でも、

 カーレーサーに必要なものは「車」

 「サッカー選手になりたい!」と言ったら、たぶんお父さんやお母さんはサッカーボールを買ってくれるだろうけど(・・・別にサッカー選手を目指さなくてもボールくらいは買ってもらえそうですけど。) でも、
「カーレーサ−になりたい」と言っても車を買ってもらえるわけがない。

 それ以外にも、どう考えても色々とお金がかかる。

 それに。

 自分の周りの人たちはたいてい家業の農家を継いでいる。
 首都から遠く離れたこの街で、多くの人は、そうやって生活している。

 
 「カーレーサーになる」という夢を実現させるのはあまりにも難しいと思ったノルビー少年は、

 それなら一生懸命勉強して、賢い子になろう。
 とにかく勉強をがんばろう。


 と、勉学に励むことにしたそうです。

 勉強に打ち込むことを心に決めたノルビー少年は、特にコンピュータ関係のことに興味を持ち、その方面のことを一生懸命勉強しているうちに・・・

 当然のことながら「コンピューター・ゲーム」との出会いもあり。


 中でも、やはり夢中になったのは「カーレース・ゲーム」

 家族とは
「勉強は絶対に怠けない」
「コンピューターに関する知識をもっともっとつける」

 ということを約束し、とにかく「カーレース・ゲーム」に情熱を傾ける日々となったそうです。


 そんなある日。

 ノルビー少年のところに1本の電話が。

 
 オンラインゲームでのノルビー少年(・・・この時にはもう「青年」くらいになっていた?)の成績を見て、「これはすごい」と思った現役のホンモノのカーレーサーからの電話だったそうです。


「ゲームでこんなにいい記録を出せるのだから、もしかしたらホンモノの車でも記録が出せるのでは? キミ、ホンモノのレーシングカーに乗ってみる気はないかい?」


 嘘のようなホントの話。

 ゲームの成績を見込まれて現役のレーサーにスカウトされるなんて・・・


 でも、ノルビーさんは言っていました。

 
 本当に自分はなんて幸せ者なんだろうと思いました。

 だけど、あれはただの「偶然」とか「ラッキー」などではなく、「必然」だったように今は思えます。


 よくよく考えると、「カーレーサー」というものに惹かれ始めてから運命の電話をもらったこの日まで、車のことを考えなかった日は一日もなかったような気がする・・・とも言っていました。

 
 「好き」という気持ち、
 それに惹かれる思いは、いつまでも持ち続けるべき。

 本当に好きなら、そのことを毎日毎日考えよう。それが自分の道へとつながっていく・・・


 
 実際のところ、ノルビーさんの場合は、本当にラッキーが重なって、今、カーレーサーという仕事に就けている、というところもあると思います。

 だって、そのままもしコンピューターゲームにハマりすぎて勉強も手につかないような状態になっていたら・・?

 いくらオンラインゲームでいい記録を残していても、それが現役カーレーサーの目に留まることがなかったら?


 でも、彼の「必然だったと思う」という言葉にはなんだかとっても説得力があって、そういう生き方ができる人って、やっぱりとっても幸せだよなぁ・・・

 自分自身を振り返っても、偶然に見せかけた必然ってあちこちにあった気がするし、

 子どもたちにも、できればこういう偶然に見せかけた必然」をぐいぐい引き寄せていくような人生を送ってほしいよなあ・・・。


 そんなことを考えずにはいられませんでした。



 そんなサクセスストーリーを静かに語ってくれた後、数分間のビデオ映像を見せてくれたノルビーさん。

 レースで優勝した時の、風を切るカッコイイ走りの映像・・・ではなく、

 ひとつのレースに出場するためにどれだけの人たちの協力が必要か、
 レースに参加しているのはハンドルを握っている自分だけではない、
 チームメートのそれぞれの役割・支えがあって初めて自分はコックピットに座ることができるのだ

 ということを静かに語ってくれる映像。

 このチョイスもいいなぁ・・・と思いました。

 


「自分が好きだと思うことがあったら、あきらめずにそれをずっと思い続けよう。毎日そのことを考えていよう。」

「夢を実現させるためには、もちろん“才能”や“幸運”に恵まれるかどうかも関係してくると思う。でも、一番大切なことは“いつも変わらないこと”“ブレない自分を持っていること”


 息子よ・・・聞いたかい?

 
 ノルビーさんの言葉のひとつひとつが、どこまでキミの心に深く、強く響いてくれている??


 いや、このお話、ここにいる3,4年生だけしか聞けないなんて、あまりにももったいない。
全校生徒に聞かせてあげたい。

 
 そんなノルビーさんのお話でした。

 この3,4年生の総合の時間では、この後もまだ何人かゲスト・ティーチャーをお迎えする予定があるとか。

 また私たち(保護者)も呼んでもらえるのかしらん?

 今からとても楽しみです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お話の合間の休憩時間。
サインを求める子どもたちに囲まれるノルビーさん。

 

 子どもたちからは「日本でのレース、がんばってください」とハンガリー・カラーの折り鶴をプレゼント。


 尚、この日のお話は、ノルビーさんがハンガリー語で話してくださった内容を、日本人学校の日原先生がその場で日本語にし、子どもたち(そして私たち保護者)にわかりやすい言葉でノルビーさんの優しい口調そのままに伝えてくださる、という形で聞くことが出来ました。




 数日後

 校長室の前に飾られている、日本人学校を訪れてくださった方々のサインの中に


新しくノルビーさんのサインも加わりました。


★Michelisz Norbertさんウェブページ http://www.michelisz.hu/en/?start=15

★所属するレーシングチーム【Zengő】のウェブページ 
http://www.zengomotorsport.hu/

★フェイスブック https://www.facebook.com/michelisz.norbert


☆今回ノルビーさんが紹介してくれたビデオ映像をご紹介したかったのですが、うまくみつけることができませんでした。
その代わりに・・・というわけではありませんが、こんな映像を発見!オープニングで、この日子どもたちに話していたエピソードが紹介されています。