やっぱり『やもり通信』

海外生活一区切り。これからは日本の生活メインの内容になりそうだけど、タイトルはやっぱり『やもり通信』・・・で、いいかなっと。

ハンガリー:最初の10日 ―その2― ゲストハウス

 
 突然ですが、映画『シンドラーのリスト』 〜もう20年も前の映画ですが〜 を見たことのある人も多いかと思います。

 それから「日本のシンドラー」とも呼ばれている杉原千畝さんの名前を聞いたことがある人も多いでしょう。

 ※「杉原千畝」さんについては2008年に『SEMPO 〜日本のシンドラー 杉原千畝物語〜』というミュージカルが上演され、今年の9月末まで続いていたそうですね。http://www.sempo2013.com/ 音楽を担当したのが中島みゆきで、そして主演が吉川晃司!うっわぁ・・びっくり。・・・・と、話が逸れてきそうなのでこの話題はちょっと置いといて・・・


 でも、ハンガリーにも第2次世界大戦末期に多くのユダヤ人の命を救った偉大なる人物が存在したことを知っている人は少ないのではないでしょうか? 
 
 こちらに赴任する前、どこかのサイトでシンドラーや杉原千畝さんのような人がハンガリーにもいたということを偶然知って、「ふーん、そうかぁ。ユダヤの歴史・・・やっぱり今までとは違う文化圏(歴史を背負った国)に行くんだなぁ。」などと思ったのですが、その人物の名前までは記憶に残っていませんでした。

 
 ですから赴任前に夫の所属先の方から、ブダペスト到着後に滞在するゲストハウスRaoul Wallenberg Guesthouse』 http://rwgh.hu/ についての連絡メールが届いた時も、そこに映しだされるゲストハウス内の写真のあまりの美しさに舞い上がり、着任早々こんな素敵なところに住んじゃっていいの? などと思いはしたものの、ゲストハウスの名前については
「ちょっと覚えにくい・・・っていうか何て読むんだろう?」くらいしか気にしていませんでした。



 さて、ブダペスト到着後、空港からまっすぐにやってきた『Raoul Wallenberg Guesthouse』は、市内を流れるドナウ川の西岸「ブダ」と呼ばれる地域の閑静なエリアにありました。

 
 ブダ地区観光には欠かせない「王宮の丘」の一角にある「漁夫の砦」、そして「マーチャーシュ教会」が目の前にあり、
漁夫の砦
マーチャーシュ教会



 観光名所に徒歩1分以内(本当に上記観光スポットが目の前!)という立地もさることながら、大きな窓からドナウ川の向こう岸にたたずむ国会議事堂がどばーーん!と見えるその部屋は、なんとも贅沢極まりないものでした。

夜はこんな感じ。
そして朝も美しい・・・。

しつこくてすみません。

 
 この『Raoul Wallenberg Guesthouse』でハンガリー生活をスタートさせて数日経ったある日、
「ここの“ラウル・ウォレンバーグ”って人の名前なんだね。なんかすごい人みたいだね、知ってた?」と夫。

 ゲストハウスのメインの入口の横に英語とハンガリー語(・・・だったと思います。写真を撮っておかなかったのでもしかしたら違うかもしれませんが)で書かれたこのゲストハウスの名前の由来となった“ラウル・ウォレンバーグ”さんについての記述を読んだらしく、その内容を話してくれました。


 ん??
 その話、なんか聞いたことある。

 そうだよ。多くのユダヤ人を救った、シンドラーみたいな人がハンガリーにも居たって前にどこかで読んだよ、私。

 
 「なんだか覚えにくい」としか思っていなかったゲストハウスの名前が、まさかその偉大なる人物の名前だったとは、この時まで全く気づいていませんでした。

 

 第2次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺(いわゆる「ユダヤ人狩り」)は、ハンガリーでも行われていたそうです。
 スウェーデン人のラウル・ウォレンバーグは、もともとここに住むユダヤ人たちを救うために外交官という立場でハンガリーに赴き、それを持っているとスウェーデンの保護下にあるということを証明する「保護証書」というものを大量に発行し、10万人にも及ぶユダヤ人の救出に成功したそうです。(ウィキペディア:http://bit.ly/1djKdWcより)

 時に強引とも言える手法で、それでも罪のないユダヤ人を助けるために自らの危険を顧みず行動したウォレンバーグは、しかしドイツ軍撤退後、進駐してきたソ連軍との事後処理に関する交渉に出かけていったあと(ソ連軍に拉致された、との記述もあります)、そのまま消息を絶ったそうです。

 ハンガリーという、彼にとっては「異国」において、ここまで命をかけてユダヤの人々を救おうとしたラウル・ウォレンバーグ。
 ブダペスト市内には彼の碑があり、そしてこんな眺めの良い所には彼の名を冠したゲストハウスが建てられています。
 


部屋のマガジン・ラックにはさり気なく、彼についての本などが並べられていました。


彼が発行していた『保護証書』のコピー。


 ブダペストに着いてから家が見つかりここを出るまでの約10日間、センスが良く使い勝手のいいキッチンがあり、らせん階段で2階部分に上って行くような素敵なゲストハウスに住みながら、今まで身近には感じたことのなかった「ユダヤ人迫害」という歴史を持つ国にこれから住むんだなぁ・・・と、ちょっとピリッとしたものを感じた、そんなハンガリー生活のスタートでした。
 
 キッチンの鍋や調理道具には『IKEA』の文字が・・・

 

 
 
<Raoul Wallenberg Guesthouse> http://rwgh.hu/
★メゾネットタイプのミディアム・ルーム(2ベッドルーム、77m2)で1泊 約100ユーロ(¥14,000ちょっと)


漁夫の砦から見たゲストハウス。手前のレンガの壁の建物。

ゲストハウスをちょっと出ると落ち着いたお散歩コースという雰囲気。(人も車もとっても少ない・・・・)