やっぱり『やもり通信』

海外生活一区切り。これからは日本の生活メインの内容になりそうだけど、タイトルはやっぱり『やもり通信』・・・で、いいかなっと。

カイロ日本人学校の「避難訓練」

 
 3月11日日曜日。

 金曜・土曜が休みのカイロでは「毎週日曜日が一週間のスタート」という感覚です。

  そして、今日は3学期最終週開始の日。
昨日あたりからいよいよ春の暖かさ、そして夏の始まりを予感させる陽気になっているカイロでは、今週、卒業式と修了式(同時にお世話になった先生方の離任式、今年度でカイロ日本人学校を去る生徒のお別れ会)が行われ、昨年4月11日から始まった平成23年度の学校活動が締めくくられることになります。

  昨年度は卒業式が行われるはずだったこの時期に、1月に始まったエジプトの政変のため児童生徒を含む学校関係者の多くが退避帰国しており、さらにまさに1年前の今日起こった「東日本大震災」のため、今度はカイロへ戻ってくるタイミングを測りかねる・・・という事態になり、最後の最後まで「無事に卒業式が行えるのか」という状態だった、と聞いています。

  結局3月の末になってなんとか卒業式は行うことができたそうですが、そんな去年の教訓を生かし、今年度はまだまだ安定しないエジプト情勢の中、教職員はじめ学校関係の方々は常に“万が一の場合”を想定しつつ、卒業式だけでなく全ての学校行事に万全の体制で臨めるようにと全力で頑張ってくださっていることが本当によくわかりました。

 
 そんな中で私が特徴的だと思ったのが、今年度合計4回行われた「避難訓練」というものでした。

 
 学校での「避難訓練」と聞くと私が思い出すのは、
 授業中の教室。
・・・「そろそろかな?」とみんながちょっと落ち着かなくなったころにスピーカーから流れてくる大きな音。

 ジリリりり・・・!!

 火災報知機の音に続いて校内放送。
「体育倉庫より火災発生。生徒は直ちにグラウンドへ避難してください。」

 そう。
 私の記憶の中の「避難訓練」は、いつもいつも「火災発生」でした。
 ハンカチで口と鼻を覆い、できるだけ身を低くして、早足で、でも走らず、前の人を決して押したりしてはいけない・・・。上履きのまま外に出てグラウンドへ・・・そんな非日常的なことが堂々と出来る、ちょっとワクワクする時間でした。

 
 ところが、今年度カイロ日本人学校で行われた「避難訓練」は、
1.市内で暴動発生⇒安全確保のため児童生徒を早めに下校させる
2.校内に不審者侵入⇒学校活動中の児童生徒の安全を確保する
というもの。

 例年は2.の不審者対策の訓練が中心に行われているようですが、今年度はやはり「今のエジプト情勢を鑑みて」1.の暴動発生を想定しての下校時の対応に関する訓練が合計3回行われ、3学期になってから不審者対策の訓練が1回行われました。

 カイロ日本人学校の児童生徒は、基本的に「バス通学」
ピラミッドがすぐ側にそびえるカイロ郊外の学校、というと、なんとも恵まれた贅沢な環境・・・という印象を受けますが、
まあ、毎日世界遺産を拝めるというのもありがたい事実ですが、
でも、結局、街からは離れている、通学に時間がかかる、というのも事実です。

 日本人学校の子どもたちにとってはほとんど新鮮味もなくなっている世界遺産のギザのピラミッド

 渋滞が年々ひどくなるカイロの街を縦断・横断しながら、市内の各エリアに住む児童生徒を順番に拾って走る4台のスクールバス。それぞれのバスには無線も積まれ、道路情報等を収集しながらよりスムーズに送迎できるようにと配慮されていますが、学校を出てから最後の児童生徒が自宅近くの停留場所に降り着くまでの所要時間は早いバスで約45分、中には1時間半近くかかるバスもあります。


 さて、避難訓練が行われる日は、まず事前に保護者の携帯電話にSMSが入ります。
【訓練、訓練。暴動注意情報あり。児童生徒は14時15分に下校。・・・返信不要 カイロ日本人学校】
 実際に届くのはこのようなローマ字でのメッセージ。海外の携帯電話ではほとんどローマ字仕様ですから・・。

 その後、すぐに担任の先生から電話があります。
通常よりも早い時間の帰宅になるが、いつも通り自宅近くのバス停留所で子どもを引き取ることができるかどうかを確認するためです。外出時にこのSMSを受け取り慌てて家に帰ろうにも、場所によっては渋滞のためバスが到着する時間に間に合わない、ということも多々あるのがカイロ。
 そんな場合は、各バスルートに設置されている『臨時預り所』で保護者が迎えに来るのを待つ、という流れになります。『臨時預り所』とは、同じバスルートの中のどなたかのお宅。それぞれのバスルート内で1〜2軒、『臨時預り所』に指定されており、自宅に戻っても保護者が不在となる場合は児童生徒はここで待機。

 後ほど、保護者が『臨時預り所』迎えに行き、無事に自宅に戻ったところで担任へ連絡(SMS)。

 全員が自宅に戻ったことが確認されると、再度学校から全員へ向けて
【訓練、訓練。全員無事帰宅。明日は通常授業です。返信不要 カイロ日本人学校】と、これまたローマ字でSMSが届き、訓練無事終了。


 このような流れの訓練を5月、7月、10月と3回繰り返し、3回目にはもう随分と手順もわかり緊急SMSにもすっかり冷静に対応できるようになってきたころ・・・・

本番が訪れました。


 11月22日(火)にカイロ日本人学校から入ったSMS。
【Demo jyohou ari. Jidou seito wa 13ji 30fun ni gekou. Rinji azukarijyo wa ◯◯ke、△△ke、◇◇ke。Henshin fuyo. Cairo Japanese School】


 このころの状況については、ブログにも書いており
ホントに【革命 第2章】!?? http://d.hatena.ne.jp/hiragam/20111123/1322084655> 確かにちょっと緊張した時期だったのですが、初めての「本番」にも関わらず、驚くほどに冷静に対応することが出来ました。

 練習の成果、ここにあり! と本気で思い、今までの「日本人学校はちょっとのことでも過敏に反応しすぎる・・・かも」という多少否定的なイメージが自分の中で和らいだのを感じたのも事実です。

 その後、翌23日と、さらに24日も【安全のため児童生徒13:30下校】という対応が取られましたが、結局それ以上の
混乱は生じることなく、なんとか通常の生活に戻ることができホッとしました。


 今年度は今週でおしまい。
来年度は5月に大統領選挙も予定されています。
まだまだ「安定」とは遠いところを彷徨っている感じのエジプトですが、カイロ日本人学校にこのままついていけば、少なくとも必要以上の「不安」を感じることはないだろう・・・今はそう思っています。

 先生方、みなさん、今後ともよろしくお願いいたします。




<おまけ:もう一つの避難訓練>

 バス帰宅の訓練とは別に、3学期に行われたもうひとつの「不審者対策」の訓練は、まだ小学1年生のみどりにとっては充分すぎるほどインパクトのある訓練だったようで・・・・。
 
 その日は帰ってきてから寝るまで、訓練のための練習の段階の話から、実際に“犯人役”の先生(?)が侵入した際の様子、どこにどう身を隠しどんな気持ちで隠れていたか、隠れている時に注意しなければならないことは何か、こっそり逃げるときの合言葉は何か・・・・などなどもうしゃべりっぱなし。

 体育の授業中の訓練となったため、ステージ横にクラスのみんなで見を寄せ合い・・・・
「犯人が体育館のドアをすごい力でドンドンドン!!って叩いて、もうドアが壊れちゃうかと思った・・・!!」
「持ってた縄跳びを踏んづけて転びそうになったの。」
「絶対笑ったりしちゃいけないんだよ。」

 とにかく、こちらが思う以上に緊張の数分間だったようです。


 翌日の学級通信に書かれていた先生の言葉、
『ちょっと怖かったかもしれませんが、一度経験しておくことで、もし何かあったとしても落ち着いて行動できると思います。今年度は、避難訓練の大切さを改めて感じる1年でした。』

 本当にそのとおり・・・そしてあっという間の1年でした。