私たちとカマ子ちゃんとの出会いは6月の上旬。
リビングのバナナ・ホルダーにぶら下がっているバナナを食べようとしたみどりが
「うわっ!カマキリ!!」
その視線の先を見ると、まだ薄肌色で細っこい、でも確かにカマキリのような形をした小さな物体がバナナホルダーにしがみついていました。
しばらくじっと見つめていたあと、「これ、飼いたい」とみどり。
えぇぇ?
カマキリを??
どうやって??
というのがその時の正直な気持ちでしたが、でもみどりの「カマキリ!」の声を聞いた時から、なんとなく
こういう展開になるんじゃなかろうか、という思いもあったような。
バナナを食べながらも視線はカマキリを追う・・・
とりあえず、大きめのプラスチックの入れ物(確か某ホテルのレストランのお持ち帰りの時に使ったヤツ)があったので、それに入れて、
そして、どうする??
「カマキリは肉食なんだよ。」
と、みどり。
実は結構な昆虫好きで、学校の図書室から昆虫図鑑のようなものを借りてきたこともあったし、
更に言うと、実は前から“「カマキリが好き」発言”をしていたこともあり・・・。
なんでも、カマを構えてシャッ!シャッ!! とやるのがカッコイイそうな。
生まれた頃から一緒の「しろいうさぎ」を未だに溺愛する一方で、
みどりの「しろいうさぎ」 直径約20cm
カマを振り上げるカマキリにも心を動かされる、というなかなかユニークな子に育ってくれているようで・・・
などと喜んでいる場合ではない。
「カマキリの飼い方」
まずはパソコンで検索。
『息子がカマキリの幼虫を見つけてきて飼いたいと言っているが飼い方がわからない』といった、お父さんからの質問も目立ちます。
やっぱり、カブトムシとかクワガタとかメジャーな(自分も小さい頃に飼ったことのある)虫たちとは勝手が違う、という感じのようで。
『カマキリは生きた虫しか食べません』
え・・・そうなの?
『自分より小さい虫しか襲いません』
えー?? だって、本人(?)まだ体長2cm足らずなんですけど。
『ペットショップなどで売られているショウジョウバエを買ってきて与えるのもいいかもしれません』
・・・・・・・売ってないでしょう、カイロのペットショップには。
「ショウジョウバエ捕獲装置」(のようなもの)も作って、外を飛ぶハエもどきを捕まえようともしましたが、全く捕まえることができず、結局私たちがこのカマキリに与えることのできる餌は「アリ」である、ということに。
しかし、幸か不幸か、今の我が家は食べ物のクズが床に落ちていても、そこにアリが群がることはなく、
一度食べかけのお菓子(何だったかは忘れてしまいました)を、ポロンとリビングのテーブルの上に置いたまま寝てしまった時も、翌朝起きてみたら、そのお菓子がそのままの姿でそこにあり
「えっ??アリが群がってない!??」と驚愕したこともある、という極めてアリ出没率が低い家。
プラスチック容器片手に、アパート入り口の植え込みのところにあるアリの巣から活きが良いアリを捕まえてはカマキリにあげる日々となりました。
そのうち、このカマキリにも名前がつき
体の色は相変わらずの薄肌色ですが、
「なんか、よくよく見ると明らかに成長してるよねー。」などと言いながら可愛がっていたのですが・・・
ある朝、いつものようにプラスチック容器をのぞくと、カマ子の姿が見えません。
みどりが元気に登校した直後でした。
「おや?」と思ってよくよく見ると、体を横にした状態で動かないカマ子が。
一瞬にして、異変を感じました。
容器を突いても、揺さぶっても、横になったその体が動くことはありませんでした。
みどりが帰宅するまで、カマ子はそのままの状態で置いておきました。
帰宅後、
涙こそ見せませんでしたが、神妙な顔でじっとカマ子を見つめていたみどり。
「どうしようか、カマ子。」と聞くと
「金魚ちゃんみたいに土に埋めてあげる」と。
“金魚ちゃん”とは、去年の日本人会秋祭りの金魚すくいでGETした小さな小さな魚。この子が我が家にいたのは5ヶ月ほどでしたが、今回のカマちゃんはちょうど1ヶ月ほどでした。
まだ小さな小さなカマ子を家の前の草むらにそっと還してあげた、その翌日、
みどりが学校から持ち帰った学級通信【Puzzle】-パズル-に、こんな詩が書かれていました。
ここ数日の学級通信ではちょうど、最近子どもたちが書いた詩を数人ずつに分けて紹介していたのです。
かまきりのかま子
村上みどり
日本人学校の近くで
バナナを買った。
いえでたべようと思ったら
カマキリがいた。
まだペールオレンジだ。
そだててせい虫にしたい。
外のありをやり
木のえだを入れて
そだててあげた。
名前はかま子。
かま子はいつも
かまをふっている。
木のえだにのり
だっぴをした。
でも、
まだまだ、
ペールオレンジだ。
いつ色が
かわるかな。