やっぱり『やもり通信』

海外生活一区切り。これからは日本の生活メインの内容になりそうだけど、タイトルはやっぱり『やもり通信』・・・で、いいかなっと。

<退避帰国日記:1月31日>

〜自警団に守られて〜

  これまで「自警団」などという言葉は普段使うことはなかったし、そんなに耳慣れた言葉でもありませんでした。

  が、ルクソールから帰ってきてから(夫は27日の大きなデモがあった日の夜から)国外へ出ることになった2月2日の朝まで、私たちは同じアパートに住む人たちで結成された「自警団」に守られて、毎晩ぐっすりと眠ることができたのです。
  27日のデモの後、街の中の警察官が姿を消してしまい(逃げた?)、それをいいことに警備の無くなったスーパーや一般の家などを狙った窃盗団が街を荒らし始めたそうです。うちのすぐ近くにも某国の大使館(…どこだったか忘れました^^;)があるのですが、その入り口にいつも2人体制で座って警備をしていた人たちも、ルクソールから戻った後はそういえば姿が見えませんでした。そんな中、「自分たちの街・家は自分たちで守る」という感じで結成されたと思われる「自警団」。
  
  「このアパートも毎晩交代制で誰かがしっかり番をしてくれている。だから安心して寝られると思うよ。」

  昨夜、夫は私たちにそう言い、私たちがベッドに入った後、彼らに夜食を差し入れに行ったそうです。外国人である自分が彼らの仲間に入っても、ある意味、場合によっては“足手まとい”になることも・・・と考え、差し入れのみで陰ながらお手伝い、と考えたようです。

  この日、31日の朝は、私も夫と一緒に軽食となりそうなスナックとポットに入れた熱いコーヒー(3 in 1の甘々コーヒー)を差し入れに行きました。
  早朝のまだ寒い時間。7〜8名の男の人が、アパートの入り口にどこからか持ってきたソファやイス類を並べて座っていました。手に武器を持っている人もいます。というか、ほとんどの人は棒のようなものを持っていて、中には銃を持っている人もいました。ニコニコと元気な人もいれば、ぐぁ〜〜っと口を開けて爆睡状態の人もいました。夫が言うには、昨夜来たときとはメンバーが替わっている、とのこと。どうやら「若者組」と「年輩組」に分かれてシフトが組まれているようす。長い時間番をしなければならないので、年齢が近く話が合う人たちでまとめた・・・ということでしょうか。


(2月1日の夜撮影)

  私たちが差し入れを置いて帰ろうとすると「いや、まあ、座れ」みたいな感じで・・・でも、残念ながら私はアラビア語でのコミュニケーションがまだできず・・・。
  でも、夫はちゃっかり座ってしばし談笑。


  
  部屋に戻った後にベランダから外を見ると、家の近くのバリケードを撤去する人の姿が見えました。外出禁止令が解ける1時間くらい前(午前7時頃)だったでしょうか。けっこうみんなその辺は柔軟に(?)対応しているようでした。
8時になって外出禁止令が解けたと思ったら、すぐにアエーシ(円形のパン)を売り歩く人の姿が見えましたし・・・。


 夜間はアパートの入り口に近い道に3本のポールを立て、そこに板を渡してバリケードを作っていたようです。
 ちょうど、板を外して運んでいる人が見えました。



  朝食後、家族4人で、近所のメトロスーパー(24時間営業。我が家から徒歩2〜3分)に買い物に行きました。
エジプトを出る日はまだ決まっていません。もしかしたら明日か明後日になるかも。あるいはそうこうしているうちに事態が落ち着いてきて、しばらく様子を見る・・・なんてことにならないとも限らない??
  いろいろなことを考え、結局、以下のようなものを買いました。
「家での食事にもでき、残りはそのまま空港へ持っていって非常食にできるもの」
「退避帰国は無くなったけれども近所の店が閉まるなどして買い物が簡単にできなくなった場合に備え、消耗品の買い足し」



   4本の牛乳はもちろんロングライフ。口を開けなかったものは、そのまま置いていきます。
   カイロに戻ってきてから飲むのだ。



  ところがこの後しばらくして、エジプトを出る日が決まったとの連絡が。

  2月2日の夕方の便でウィーンに飛び、一泊した後、翌日の昼の便で成田へ。ウィーンから成田は機中泊になるので成田到着は2月4日午前8時の予定。


  2日は夕方の便とは言え、何があるかわからないので朝食を食べたらすぐ家を出るくらいになるだろうとのことでしたが、それでもこの日はまだ1月31日。今日の昼・夜、明日(2月1日)の3食、そして2日の朝食まで家で食べることになります。


  家に残っていたお米は昨日、全部「おにぎり」にしてしまいました。これを食べてもいいけれど・・・でも、これは空港で足止めを食った場合の非常食。そう思って、家に残っているパンやシリアル、パスタ、それに冷凍食品などで2日の朝まで食いつなぐこととして、たくさんの「おにぎり」は冷凍庫へ。冷凍庫に入れておけば確かに腐ることはありません。サンドイッチだって冷凍してお弁当にすれば自然解凍された時ちょうど食べ頃になってるっていうし。
・・・しかし。(結末は後日;)


 
  この日は、ヘリコプターが上空を旋回している音は朝から聞こえてきましたが、あのすさまじい戦闘機の音は聞こえませんでした。通りもなんとなく静かで、このまま穏やかに時が過ぎていくような気もしました。

  が、とりあえず出発の日が決まった時から、私の「(日本での)買い物メモ」には、どんどんといろいろな物が書き足されていきました。帰ると決まったらこの機会に日本から買って来たいものは結構あって。



  この日の夜も夫は自警団のみなさんに差し入れを持っていきました。
  そして、その後に私たちがしたことは・・・

  DVD鑑賞。

  普段は翌日が休みの木曜日に、子供達が寝た後に二人でよく映画やドラマのDVDを見るのですが、
  昨日も今日も明日も休み・・・というこの毎日。そして、仕事をしようにもネットがつながっていないので限界がある夫。私も子どもが寝た後のメールチェックといういつものことが全くできないわけで。
 
  とりあえず邦画のDVDを1枚。
  

  そうなんです。目の前で革命が起きていても、ネットもつながらず何もしようの無いときは・・・
  こんなふうにDVD鑑賞なんてものを、してしまうものなのかもしれません、人間って。
  さすがに今回は本当に複雑な気持ちになりましたけど。

  「・・・なにやってるんだろう?」って気に、なってしまいましたけど。