「え？マジ？ 一体なんなのこの展開は・・・」
という思いで、この１週間を過ごしています。（正確には5日間というところです。今日は11月23日（水））
たぶん私だけではなく、カイロ（エジプト）に住んでいる人や以前ここに住んでいた人たち、エジプト関係者の誰もが同じ思いなのではないでしょうか？
先週の金曜日（11月18日）にまた大きなデモがあるらしい、という話は数日前から出ていました。
でも「金曜日にデモ」というのは、すでにあまり驚くべきトピックではなくなっていたカイロ。
2月のムバラク退陣後も大なり小なりのデモがちょこちょこと行われてはいたからです。
ただ今回は、11月28日（月）がムバラク退陣後初めての選挙が行われる日となっていて、
その選挙についてもたぶん多くの人が「大丈夫？本当にきちんと行われるの？」という思いで見守るような感じになっており、
そんな選挙を10日後に控えたこの時期の「デモ情報」は、いつもよりはほんのちょっと「気を付けなければ」という思いが強くなっていたかもしれません。
そして18日金曜日。
どんな騒ぎになったかというと・・・
実は、この日は思っていたよりも平和裡に夜を迎えたようでした。
「思っていたほどじゃなかったね。」と誰もが感じていたのではないでしょうか？
我が家も翌日の土曜日（19日）、昼すこし前から家族揃って郊外の大型ショッピングモールに買い物に出かけたのです。
タハリール広場とは全く別の方面ではありますが、もし前日（金曜日）のデモがきっかけで街全体がざわついているようだったら外出は控えたと思います。でもこの日は特に迷うこともなく出かけたのでした。
ショッピングモールで半日遊び、翌日の草太の誕生日プレゼントも無事GETして、タクシーにて帰路についた午後5時。今思えば、この頃すでにタハリール広場では今日まで続く混乱・衝突がじわりじわりと始まっていたのでしょう。
「空いている道で帰って。」と運転手さんにお願いし、街の中心部を大きく迂回するルートで帰ってきたのですが、そこがまた混んでいて。
「やっぱり土曜の夕方は混むんだねえ・・・。」などとその時は思っていたのですが、もしかしたらタハリール周辺で道が封鎖され、そこを避けた車が迂回路に流れてきていたのかもしれません。
それでも私は、その翌日の日曜日（20日）ごろまで「タハリール、なんだかまだ人が集まっているみたいだね。」という程度の認識しかありませんでした。
「土曜日にタハリール広場とアレキサンドリアで亡くなった人がいる」と聞いても
「え？死者が出ちゃったの？？」という感じでした。
もちろん「人が亡くなる。」というのは大きなことではありますが、デモに参加していた人が飛んできた石がぶつかるなどの不幸な事故で命を落としてしまった・・・そういう類の「死」だと思っていたのです。
ところが。
実際は、土曜日に再びタハリール広場に集まってきた人たちに対し、警察が「強制排除」という名目で武力行使（銃の使用）を始めていたらしく、その手荒な行為に一般市民も怒りを爆発させ・・・
ということで、タハリール広場での警察とデモ隊（一般市民）との衝突はその後、勢いが衰えることのないまま今日、23日水曜日を迎えているようです。
現段階で死者は30人を超え、負傷者は2300人を越えた、という情報もあります。
ほんの5日間で、それもタハリール広場周辺という限られた場所で30人も命を落とすなんて、尋常なことではありません。
しかもその様子・・・頭から血を流している人の姿、首に銃弾を受け意識を失いかけている人を必死に助けようとしている人たちの姿、さらに亡くなった人の遺体が無造作に引きずられ道端に置かれる様子などがYou Tube等でどんどんアップされており、それを見た人たちが怒りを新たにしタハリール広場へ向かう―
そんなことがここ数日繰り返されています。
facebookやTwitterでこのような情報が共有され、『みんなでタハリールへ行こう』という雰囲気が盛り上がっていく様子はまるで1月の革命の時と全く同じ流れだ、と常に情報をチェックしている夫が言っています。
が、それは言葉の問題等でたぶん大ざっぱな情報しか得られていない私たち（一般外国人住民？）でも、ひしひしと感じていることです。
『なんか、こないだ退避になった時と似てない？』
『これからちょっと買い出しにでも行ってこようかな』
『ちょうど今日あたり両替に行こうかと思っていたところ』
『交通警察がいなくなるかも、って話もあるから出かける時は気を付けてね』
というようなやり取りがfacebook上で行われ、お互いに情報交換をしながら、
でもそれなりに冷静に生活しています。
そう。
冷静に。
今、ここにいる多くの人達にとって、このような状況は
【あの時、一度通った道】なのです。
この先、いったいどうなるんだろう？？
と思いながら、外に出られなくなった時のために米や水や保存食をある程度買い込んでおき、
その後、会社や所属先の指示に従って、とりあえずの荷造りをして空港に向かった2月の初め。
あの時の経験が意外と活かされており、
念のため・・・と思って近所のスーパーに行っても、今ここで買っておくべき物がパパっと頭に浮かびます。
ビスケットやシリアルバー。スパゲティなど乾物。そしてツナ缶。
トイレットペーパーは昨日買ったばかりだし・・・。
きっと来週急に「（また）退避帰国」となったとしても、（あ、いえ、あくまでも仮にの話です）この分だと10分程度で荷造りができるのではなかろうか・・・？と思います。
今週に入り、日に日にタハリール広場に集まる人の数は増えてきているようで、いつその騒ぎがタハリール広場を越えた範囲に広がるかわからない・・・という懸念から、
22日（火曜日）に予定されていた草太のCBS（Cairo British School）のスポーツ大会は中止になり、
25日（金曜日）に予定されていたみどりの日本人学校の「学習発表会」も延期となり、
また、それぞれの学校の下校時間も1時間〜２時間半・・・とだんだん早まってきています。
当然のことながら、職場（国際交流基金カイロ事務所）がタハリール広場の目と鼻の先にある夫は、今週初めからずっと自宅待機状態。毎日家で仕事をし、私と一緒に自宅で昼ごはんを食べる毎日です。
このままずるずるとした状態が来週月曜日の選挙当日まで続くのでしょうか？
というか、こんな状態で選挙がまともに行われるわけがない、と思うのですが・・・
一体どうなることやら。
ただひとつ明らかなことは、選挙をやってもやらなくても（万が一今回の混乱が原因で選挙の実施が不可能になったとしても）、そして例え選挙が行われたとしても、
その結果がどんなものであれ・・・
結局はなんらかの騒ぎがおこるに違いない、ということです。
（いえ、あくまでも私見ですが）
となると、いったい、なにがどうなればこの国は落ち着くのか・・・
少なくとも学校行事が予定通り行われ、日常生活が普通に続けられる日々に戻ってくれるのか。
タハリール広場周辺を通る際にマスクを着用しなくてもいいような日常に戻ってくれるのか・・・
（デモ隊を排除するために警察は催涙ガスを多用しており、周辺に近づくだけで喉や頭が痛くなったりするばかりでなく、それによって窒息死する人も出ているそうです）
前回（多くの人が命を落とした革命）の繰り返しは避けたいと誰もが思っているはずです。
でも、どうすればこの国がよい方向へ向かえるようになるのかを冷静に考え、それに向かって建設的な意見を述べつつ民衆を引っ張っていける人が、いったいどこにいるのか、私にはわかりません。
そして、「もしかして今タハリールにいるほとんどの人達も同じ思いなのかも。」とも思います。
どうしたらいいのかはわからない。
わからないけど、でも今のままじゃダメだ。
でも、それだけじゃ、大きな国ひとつが生まれ変わることは不可能なのではないでしょうか？？
ある友人（ほんの10日ほど前にカイロの病院で出産したばかり）が、facebook上にこんなことを書き込みました。
（何度も衝突が繰り返される今のカイロの状況を受けて）
まるで激しく訪れる陣痛の様。そして、超難産。果たしてどんなのが産まれるのか。未熟児か…そもそも、今が正産期なのか…
ふぅ。
まさにそんな感じです。
先は見えませんが、
でも、これ以上の混乱は本当に避けてほしい。
これ以上、命を落とす人が増えないでほしい。
本当にそう思います。
最後に、夫がTwitterの中から拾ったひとつのツィートを・・・
【今、エジプトで人々が唯一救急車のために道を空ける場所、それはタハリールだ。】
こんな状況がいつまでも続いてはいけませんよねー。
っていうか、普段は救急車が来ても全然道を空けようとしないエジプト人たちもどうかとは思いますが・・・
《おまけ：19-22日までのタハリール広場の動画まとめ》
これが、ここ数日にタハリール広場（我が家から地下鉄に乗って２つ目の駅で降りたところ）で起きている「現実」です。
本業「日本語教師」＋「情報収集・発信業」の夫がTwitterから見つけました。（一部、遺体の映るシーンあり）
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=PyG3fRHYYQo
