埼玉県の川越市に【スカラ座】という映画館があります。
この令和の時代にあって、完璧なまでの『昭和の香り漂う映画館』。
前身は明治時代に開業した寄席だった・・・という驚きの歴史をもち(川越スカラ座 - Wikipedia)、そして、巷の映画館よろしく経営が困難になり、平成の時代にはしばらくの休館期間もあったというこの【スカラ座】ですが、のちに熱いファンたちによってみごとな復活を遂げ、今ではこの川越にはなくてなならない存在・・・に、なっているかどうかはわかりませんが、少なくとも先週、私はここでなんとも素晴らしい体験をさせていただきました。
きっかけは10月11日(金)。(←あの超大型台風19号上陸の前日)
久しぶりに夫(👈10月7日〜14日まで赴任先のカナダから一時帰国中)と、この【スカラ座】に映画を観に行った日のこと。
この日観た映画は、あのロバート・レッドフォードの俳優引退作品とされる『さらば愛しきアウトロー』。それなりのアクションシーンもあるけど今どきの映画のような派手さはなく、そしてどこかじんわりとくるものがあり。でも、悲しさ・寂しさよりも清々しさが残るような「あぁ、観てよかった。」と思える作品でした。
で、帰りがけに、劇場内にところ狭しと貼られている個性的な映画たちのポスターをあれこれ観ていると、いきなり見慣れたポスターが目に飛び込んできました。
あれ〜〜? こんなところに『レ・ミゼラブル』❢
すると、待っていましたとばかりにスタッフさん登場。
「そうなんですよ。『レ・ミゼラブル』は、日本での上映権が今年の12月で切れてしまうので、映画館で観られるのはもうこれが最後のチャンスですよ。」
へぇ〜・・・ そんな「上映権」というのがあるなんて知らなかった。
「上映初日の12月14日は〈発声可能上映〉と言って、観客も一緒に歌いながら観るんですよ。よかったら是非いらしてください。」
実は『レ・ミゼラブル』歴はそこそこの我が家。
最初はGoogle Playで映画を数回観て、
次はブダペストでミュージカルを(・・・ハンガリー語で(^_^;))
そして、カナダのエドモントンでもミュージカルを(こちらは英語で)
その間にも英語の勉強と称してまたGoogle Playで映画観て。
そんなわけで歌える歌えないは置いといて、
でも曲はほとんど頭に入っている。
それにしても “映画館でみんなで一緒に歌いながら” ・・・なんて日本らしからぬ雰囲気に興味津々・・・というか、気分はすっかり参加モード。
12月14日(土)をしっかりカレンダーに書き込み、せっかくだから誰かこういうのが好きそうな人を誘いたいけど・・・あ!心当たりめっけ! などと思ったのが10月11日。
※絶対、喜んで一緒に行ってくれそうな夫は、12月のこの時期はすでにカナダに戻っているので残念ながら対象外。
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この時、頭に浮かんだSちゃんもラッキーなことに12月14日は空いており、
先週土曜日、いざ、小春日和の川越へ。
上映時間の30分ちょっと前には、路地奥の【スカラ座】はこんなに人が。
通りがかった観光客が「え?今日、何かあるの?」と思わず足を止めるほど。
何度か行ったことのあるこの【川越スカラ座】ですが、124の座席がすべて埋まっているのを(更に後ろに立ち見メンバーも・・)私は初めて見ました。
座席を確保すると、何やら準備を始める人や
記念撮影をする人たち。
妙にベレー帽っぽいのをかぶっている人が目についたのは、
きっとエポニーンのコスプレだったのでしょう。
こんなグッズも配られ、もう周りはやる気と熱気でムンムンの雰囲気。
(黄色い紙は「仮釈放証」。ストーリー内の然るべき場面でみんなで一斉に破り捨てましたww)
この『レ・ミゼラブル』の<発声可能上映>、始まりはなんと5年前(2014年)で、今回で7回目とのこと。
すでに常連となっている人も多く居たようで、その人たちにとっては「これが最後の<発声可能上映>」と感慨もひとしおだったことでしょう・・・
その想いのままに、フランス国旗やら紙吹雪やらクラッカーやらその他鳴り物や小道具いろいろを、これでもかというくらいに準備してきていたようでした。
(一緒に歌うだけじゃなくて、2年前からは“心の趣くままに何やっても良い”、といういわゆるマサラ上映のスタイルもドッキングしているとのこと)
そんな中に、まるで事情も分からぬままに迷い込んでしまったかのような私とSちゃんでしたが、私たちのように「今日が初めて」という人もある程度いて、
・・・というか、そういえば『レ・ミゼラブル』の映画を観るのも今日が初めて、という人もいたっけ(笑)
つまり、もうなんでもありの極みのような【川越スカラ座】での『レ・ミゼラブル』。
いや、素晴らしかった。
もう何度も何度も観ているこの映画、実はスクリーンで観たのは初めてだったんですが・・・
いや〜・・・
大きな画面での大迫力、という要素は当然のこととして(でもこれはやっぱり映画を観る上ですごく大事だって確信した)、
ストーリーが盛り上がってくるとスクリーン前面に舞い踊る紙吹雪。
ムチの音や発砲音に合わせて館内に鳴り響くクラッカーやその他の鳴り物。
あんなにぎやかな中でも、あんなにもストーリーに集中できて、映画の世界にすっぽり入り込んでいけるということを実感できたのは大きな驚きでした。
「映画と一緒に歌う」って言っても歌詞を全部覚えているわけじゃないし・・・と、こっそりスマホのすぐ見えるところに歌詞を忍ばせておいたけど、そんなの見てるひまあるわけもなく。
もうサビの部分とかなんとなく分かってるところだけ、映画のシーンに酔いながら「発声」する。
でもなんと言っても悔しかったのが、ここなら歌える!という耳によく馴染んだフレーズが流れるのはストーリーの中でも非常に盛り上がる場面で、そんな場面にあの大画面で迫られると胸にぐっときて、声より先に涙が、だーーーーーっっ💦
う、歌えないっ!!
もう何がなんだか分からないけど、これまで観てきた『レ・ミゼラブル』の集大成と称したくなるような2時間40分でした。
みんな(その映画が大好きな人たち)と一緒に観るって楽しいんだなー とか
映画は静かな中で集中して観ないと感情移入できないってのはうそだな、 とか
新しい発見もいくつかありました。
あと、やるならとことん!の素晴らしさ。
<発声可能上映>全7回「皆勤賞」という男性は、最初から最後まで全部の歌を歌っていました。掛け合いのところも可能な限り2役で。ジャン・バルジャンから一瞬でジャベールに。女性パートもしっかり裏声で。歌い初めのまだ囁きのようなところまで、映画のセリフのようにしゃらしゃらと「発声」・・・。
最初は、常に微妙に映画のセリフとかぶる音声に耳がいってしまったのですが、途中から全く気にならなくなり、とにかくいつまでもいつまでもスクリーンと一緒に歌い続けるそのレミゼ愛に、ひたすら尊敬の念を抱くのみでした。完全制覇するのにどのくらいの時間がかかったのか・・・聞いてみればよかったな。
最初にイメージしていたものとはだいぶ違った『レ・ミゼラブル』の<発声可能上映>でしたが(ここまですごいとは全く思ってなかったww)、最後の最後というこの機会に仲間入りさせてもらうことができて本当にラッキーとしか言いようがありません。
ありがとう。【川越スカラ座】さん。
で、
そうですね〜・・・
次はこの流れで『オペラ座の怪人』なんていかがでしょう❓
(歌はほとんど歌えないけど・・・)